2016年 06月 04日
「リーマンショック以後」 B |
小野利明著「リーマンショック以後」への私的なメモランダム
嶋田邦雄
1
〝ヨーロッパ大陸を幽霊が徘徊している〟との名句で活写された時代は一九世紀中葉であった。その手法で現代の世界を表現するとしたら、差し当たり「資本主義は自らの崩壊、壊滅の幻影が徘徊するのをただ、茫然と見つめている。いわく〝金融の桁外れの量的緩和〟〝金利政策〟〝財政出動〟、さらには〝戦争挑発〟とあらん限りの手を打つが、それも全く空しい努力であることを知っている。自らの避けられない死滅を認めることができない宿命的立ち位置がさらに新たな危機を増殖し」とでも言うことにでもなろうか。
問題はこの現代世界の歴史的段階の解明に対する専門の学者、研究者たちの迫り方にある。資本主義を擁護する立場からの政策提言的立論の場合は仕方ないとしても、資本主義を、歴史的にあるいは搾取される労働者の側から根本的な批判を投げかけようと試みる人々が、極めて専門的=局所的分析に陥り、次々と現れる〝新たな危機〟に有効に対応できていない状況である。そんな折、小野利明氏の著作『リーマンショック以後――変貌する資本主義』に出会った。私の数々の疑問に、多角的な側面から貴重な示唆を与えてくれる刺激的な著作である。
まず、世界、およびその歴史の展開を凝視する中から資本の本質を抽出する姿勢――その都度、その都度の危機に対する資本および資本主義諸国の国家的対応策と、資本増殖のための流通・交換過程の変化を時事的な出来事とも関連付けながら、その変化の意味を解明しようとする姿勢に注目した。
色を変えたところは、私のアプローチになるところです
嶋田邦雄
1
〝ヨーロッパ大陸を幽霊が徘徊している〟との名句で活写された時代は一九世紀中葉であった。その手法で現代の世界を表現するとしたら、差し当たり「資本主義は自らの崩壊、壊滅の幻影が徘徊するのをただ、茫然と見つめている。いわく〝金融の桁外れの量的緩和〟〝金利政策〟〝財政出動〟、さらには〝戦争挑発〟とあらん限りの手を打つが、それも全く空しい努力であることを知っている。自らの避けられない死滅を認めることができない宿命的立ち位置がさらに新たな危機を増殖し」とでも言うことにでもなろうか。
問題はこの現代世界の歴史的段階の解明に対する専門の学者、研究者たちの迫り方にある。資本主義を擁護する立場からの政策提言的立論の場合は仕方ないとしても、資本主義を、歴史的にあるいは搾取される労働者の側から根本的な批判を投げかけようと試みる人々が、極めて専門的=局所的分析に陥り、次々と現れる〝新たな危機〟に有効に対応できていない状況である。そんな折、小野利明氏の著作『リーマンショック以後――変貌する資本主義』に出会った。私の数々の疑問に、多角的な側面から貴重な示唆を与えてくれる刺激的な著作である。
まず、世界、およびその歴史の展開を凝視する中から資本の本質を抽出する姿勢――その都度、その都度の危機に対する資本および資本主義諸国の国家的対応策と、資本増殖のための流通・交換過程の変化を時事的な出来事とも関連付けながら、その変化の意味を解明しようとする姿勢に注目した。
色を変えたところは、私のアプローチになるところです
by rappp
| 2016-06-04 19:50
| 政治・経済・社会